スタート!
まずまずのスタート。 2位のポジションをキープしたまま1コーナーに進入。
路面はウェットだが、コーナーでも前のライダーに負けじと倒しこみ、アクセルを開ける。
(前のライダーが大丈夫だから、俺も行けるだろうと単純な動機だが…)
ヘアピンの進入で、前のライダーのインがあいている。
行くか。 インにタカトキのマシンを滑り込ませる。前のライダーに軽く肘が当たってしまった。(汗
抜けちゃった。 抜いちゃった! トップ浮上~!! ホントかよ~?
一周目後半もそのままポジション維持して、最終コーナーを立ち上がりホームストレートへ。
やった~、トップで一周目のコントロールライン通過! と、思ったのもつかの間、、、
2周目1コーナーの進入で後ろのライダーのフロントタイヤがインを突いて来たのが見えた。
「うぉっと!」
マシンの挙動を乱すと、あっという間にそのライダーに抜かれ、更に次のライダーにも抜かれ
2コーナーまでの間に3位まで順位を落としてしまった。
くっそ~、抜き返したい! などと思いつつ、食いついていくも3周目突入。
1コーナーの進入!
「うぉっ!!」
またしても後ろのライダーにさされた。 ザックリと。
あっというまに最下位に陥落。 1周目でトップだったのに、3周目でビリ。
あ~あ、やっぱり、勝てないのかな~。 それにしても恥ずかしい。 カッコワルイ。
何だか、緊張の糸が切れかけてしまった。(恥ずかしながら)
4、5周目とそのままのペースで最下位でレースを続ける。
「応援してくれている皆になんて言おう? 嫁と子供が見に来てなくてよかった~。」などと思いながら。
しかし、一番後ろからレースを見ていると、冷静になれる。
1・2位のライダーは、そう俺より速いわけじゃない。 3位のライダーより俺の方が速い。
しかし、ホームストレートと1コーナーの進入は俺より皆が速い…
そうするうち、1・2位と我々3・4位の間が離れてきてしまっているのが分かる。
このままじゃ間違いなく最下位か、良くて3位だ。
6周目。 行くぞ。何の為に稽古してきたんだ! ヘアピン進入。
ブレーキングを遅らせ、前のライダーのインを突く。 抜けた。 抜いた。 3位浮上。
離れてしまった、1・2位を追いかける。
うむ。やはり俺より別に速いわけじゃない。 頑張ればチャンスはあるはず!
1・2位はバトルをしている。 ラップタイムも牽制しあっているから遅くなる。
8周目。 ヘアピン二つ前で2位のライダーがラインを外した。 チャンス。
二つ先のヘアピンでさしてやる。
ブレーキング。 抜けた。 2位浮上。 後は、一人だ。
後ろにつけて観察すると、ヘアピン以降は俺の方が速いようだ。
しかし、そう思わせているだけかもしれない。
9周目に入る。 ストレート、1コーナー。 やはり前のライダーが速い。
さて、ヘアピンでさすか?
いけそうだが、ここでトップに立ってもファイナルラップでまた1コーナーでさされるだろう。
2位、どころかもっと順位を落とすだろう。
よし待とう。 ピッタリと後ろにつけたまま、ファイナルラップ。
まもなくヘアピン進入。 もう、行くしかないでしょう。 ここは稽古中もよく抜いたコーナーだ。
自信を持て! ブレーキング!! インにマシンを突っ込ませる。 抜いたがラインが膨らむ。
トップ浮上! 耐えろ!ここから先は押さえられるはず。
最終コーナーを立ち上がる。 後ろは振り返らない。
チェッカ~! やった~! あきらめなくて良かった。 雨のレースで勝てた!
ウイニングラン。パドックに戻ると応援の皆が迎えてくれた。
2位と3位のライダーがマシンを止めるとすぐ、
「おめでとう」と言って、握手をしてくれた。
滅茶苦茶感動した瞬間だ。1位になったことよりも、そのライダー達の行為に感動した。
スポーツマンだ~!
さ、気持ちを切り替えよう。10分後に3時間耐久スタートだ。
タカトキはスタートライダー。
つづく
写真は優勝の金メダル♪